一瞬の風になれ 第一部 イチニツイテ
2007/08/11
『しゃべれどもしゃべれども』を読み終えたので、本丸の『一瞬の風になれ』に手を出しました。うん、売れるのわかる。読みやすい。面白い。
僕は、基本的に小説は通勤の電車の中でしか読まないのですが、たまに面白い本に当たると、流れで読み続けてしまいます。帰りの電車で読んで、定食屋で晩ご飯食べながら読んで、家に帰って部屋でも読みます。『一瞬の風になれ』は、見事にこの流れに乗りました。こうなると、一冊を一日で読んでしまう。
第一部とあるように、これは三冊あるうちの一冊目。僕は、分冊になってる本をまとめ買いしないタイプなので、一冊読んでは次を買う、を繰り返すわけです。結局、一冊を一日で読んでしまったので、次の日読む分も買っておかないといけないのに、朝の通勤ルートに書店はないし、夜は閉店してるしで、なかなか続きが買えなくて、すごく不機嫌になりました。それくらい面白い。
内容は、中学までサッカー漬けの生活を送っていた主人公の新二が、高校で陸上の短距離を始めるというお話。親友の連は天才的な短距離ランナーで、しばらく陸上をやめていたものの、二人で陸上部に入部。サッカーでは目の出なかった新二が、陸上で才能を開花させていくわけです。
『しゃべれどもしゃべれども』と同じく、文章は新二の一人称視点なのですが、高校生なのでかなり砕けた表現です。読み始めたときにはすごく違和感があったのですが、すぐになれました。僕はもう高校を卒業してから10年近く経つし、高校自体にどんなことを考えていたのか余り覚えてもないけど、40代後半のしかも女性の佐藤多佳子さんが、男子高校生の視点で文章を書けて、しかも面白いのって、相当にすごい。
第一部では高校入学から一年の秋までが描かれています。まだ新二も初心者なので、大した成果は残していません。とはいえ、才能はあるものだから、そこそこできちゃう。でも経験不足でいざとなると失敗する。その描き方がまた巧くて、読者である僕は、「ああ、こいつこれからどんどん速くなるんだな」と期待させられる。「がんばれ、がんばれ」と応援してしまう。
さすがに僕はもう高校生ではないから、自分に重ねることはできません。でも逆に、「高校生がこれだけがんばってるんだから、俺もっとやんなきゃ」と思わされてしまう。ただ「面白い」だけで終わらない。いいね。